限定合理性についての講義動画を学部YouTubeにアップしました

みなさん、こんにちは。

現代政策学部の酒井宏平です。

学部のYouTubeチャンネルに「限定合理性」についての講義動画をアップしました。

動画の大まかな内容は以下の通りです。

科学的・合理的アプローチの限界

1960年代に最高潮を迎えた科学的・合理的な政策決定のアプローチは、やがて破綻しました。

理由は、政策分析コストが莫大にかかったから。そもそも、予算を最適に分配するために政策分析を始めたのに、その政策分析のせいで予算が逼迫するようになったのです。

「健康になるために高い健康食品を購入して、その購入を稼ぐために睡眠時間削って昼夜働き、食費を削って安い即席麺ばかり食べるものだから、どんどん健康状態が悪くなっている。でも、こうして生きていられるのは、あの高い健康食品を摂取しているからに違いない!」

そんな状況になっていたわけです。

さらに、「そもそも、我人間は合理的に物事を考えて意思決定をしてるっけ?」という批判も出てきます。

動画では、事例としてエルスバーグの逆説を紹介しています。

エルスバーグの逆説

中が見えない箱があります。

中には青いボールが30個、青と赤いボールが60個入っています。緑と赤いボールはそれぞれ何個入っているかわかりません。赤が60個で、緑が0個かもしれません。赤が30個で、緑が30個かもしれません。

さて、今から選択肢が2つ提示されます。あなたならどちらを選びますか?

第1問

  • A:箱から一つボールを取って、青なら100ドルもらえる。
  • B:箱から一つボールを取って、赤なら100ドルもらえる。

さて、あなたは、AとBどちらを選びますか?

大抵の人は「A:箱から一つボールを取って、青なら100ドルもらえる。」を選ぶことでしょう。

第2問

  • C:箱から一つボールを取って、青か緑なら100ドルもらえる。
  • D:箱から一つボールを取って、赤か緑なら100ドルもらえる。

さて、あなたは、AとBどちらを選びますか?

大抵の人は「D:箱から一つボールを取って、赤か緑なら100ドルもらえる。」を選ぶことでしょう。

逆説と呼ばれる理由

AからDまでの選択肢を見比べて、A・BとC・Dの間にどんな違いがあるのかを見てみましょう。

  • A:箱から一つボールを取って、青なら100ドルもらえる。
  • B:箱から一つボールを取って、赤なら100ドルもらえる。
  • C:箱から一つボールを取って、青かなら100ドルもらえる。
  • D:箱から一つボールを取って、赤かなら100ドルもらえる。

太線と下線で強調しましたとおり、CとDの選択肢は、AとBの選択肢に同じ数の緑のボールが加わっているだけなのです。

つまり、第1問でA「A:箱から一つボールを取って、青なら100ドルもらえる。」を選択したのなら、第2問ではAに緑のボールが加わった「C:箱から一つボールを取って、青か緑なら100ドルもらえる。」を選ぶのが自然です。

でも、多くの人はなぜか「D:箱から一つボールを取って、赤か緑なら100ドルもらえる。」を選んでしまうのです。

不確実性を避けたい人間

動画では説明しませんでしたが、なぜ「C:箱から一つボールを取って、青か緑なら100ドルもらえる。」ではなく、「D:箱から一つボールを取って、赤か緑なら100ドルもらえる。」を選んでしまうのか言うと、人間は不確実なことを避けたいと思って行動するからと言われています。

AからDの発生する確率は以下のようになります。

  • A:青なら100ドルもらえる:3分の1
  • B:赤なら100ドルもらえる:ゼロ〜3分の2
  • C:青かなら100ドルもらえる:3分の1〜1
  • D:赤かなら100ドルもらえる:3分の2

AとDははっきりと確率が定まっています。でも、BとCは数が分からないので確率の範囲はある程度分かりますが、はっきりと決まっていません。これが不確実性です。

不確実なことを避けたいので、確率がはっきりと定まっているAやDを選択したわけです。

サイモンの限定合理性

人間は合理的ではないという一例としてエルスバーグの逆説を紹介しました。

近代経済学では、合理的なモデルを使って人間の行動を説明しようと試みて来ましたが、それには限界があることもわかりました。

そして、サイモンは、人間は不完全な知識、予期の困難さ、認知の限界の範囲を伴うとして限定合理性という概念を提案しました。

つまり、人間は合理的ではないよ!と言ったのです。

こうして、政策学においても、科学的根拠や合理的意思決定に基づくアプローチの限界が明らかとなり、政治学的なアプローチが見直されるきっかけとなりました。