研究の質は、仮説の出来と言って過言ではありません。それくらいに「仮説は重要だ!」と研究者として僕は思います。
この記事では、現役大学教員の僕・酒井宏平が仮説を立てる際に、押さえておくべき5ポイントを紹介します。
これで、あなたの研究は、飛躍すること間違いなし!
博士(政策科学)の僕・酒井がわかりやすく解説します。
定型文通りにする
仮説は、ある程度決まった書き方があります。
例えば、以下のような例になります。
- 「遠くに住んでいる高校生ほど、早起きをする傾向があるのではないか?」
- 「遠くに住んでいる高校生ほど、体力がある」
文章の終わりは疑問系でも、肯定系でも構いませんが、仮説は、「〇〇ほど、××である」のような定型文で記載しましょう。
仮説は、2つの部分で構成されます。
- 前半の「〇〇ほど」という主語に当たる部分
- 後半の「××である」という述語にあたる部分
実は、2つの部分で構成されていることは、すごく重要なことです。
アンケート調査をする場合は、この2つの部分からそれぞれ質問文を作成しますので、必ず前半と後半の2つで構成される仮説にしましょう。
ひらめきを大切にする
仮説の文章の形はわかりました。では、実際に仮説の文章を作るとき、どのようにアイディアを出して作ればいいのでしょうか?
僕は、ひらめきで仮説を作ることをオススメします。
人間は一人一人が脳というスーパーコンピューターを持っています。今まで、あなたはさまざまな経験をしてきたでしょうし、さまざまな人や思想に出会ったはずです。
そうした経験則や勘や直感から、導き出されるアイディアこそ、人間の宝です。あなたの宝なのです。
まずは、かっこいいことは考えずに、あなたの脳みそを信じて、仮説を作りましょう。
先行研究をヒントにする
「直感や勘で仮説を作ってください」と言いましたが、さすがにそれだけでは研究と呼べません。
研究は、先人たちの発見の上に成り立っている必要があるからです。
先人のおかげで、ここまでわかってる!
じゃあ、私はその続きをしよう!
研究は問いの設定から仮説の実証までを全部自分でやりますので、先人たちがどこまで発見していて、自分はどこを発見しようとしているのかを、読者に説明しなければならないのです。先行研究の確認は不可欠です。
また、あなたが直感や勘で作った仮説は、先人たちによって既に証明されている場合もあります。全く同じことをやっていては、2度手間だし、あなたの研究は無駄に終わってしまいます。
このあたりの話を学部生に要求するのは「酷な話だな」と個人的には思います。ほとんどの大学生は研究者になるために研究をしているわけではないので・・・。
でも、先行研究をヒントにすることは、やはり重要なことです。
あなたがYouTubeを始めたり、ブログを始めたら、自分の経験だけで運営していきますか?ゼロの知識からスタートしますか?
おそらく、いや必ず、すでに成功している先輩YouTuberや先輩ブロガーを参考に運営するはずです。副業スタートやフリーランスになるときも、その先輩方が、どうやって成功したのか、私とどう違うのか、などを調べて、あなたの運営のヒントにするはずです。
研究も同じです。先人たちの発見をヒントにして、さらに新しい仮説の設定や新発見を目指してください。
たくさん仮説を作る
ゼミ生に「仮説を作ってください」と言っても、せいぜい10個くらいしか作れないことが多いです。
もう思いつきません・・・。
100個くらい作ってほしい!!!
とにかくたくさん作りましょう。数撃ち当たる理論です。
- しょうもない仮説を作ってしまうかもしれません。
- ぜったいハズレの仮説を作ってしまうかもしれません。
でも、しょせん仮説なんですよ!仮の説なんです。
こんなに堂々と仮の説を主張できる機会はそうそうありません。
水曜日のダウンタウンだって、「説立証ならず」の企画をたくさん放送してますよ。
100個くらい仮説を作った後で、取捨選択すればいいだけです。まずは、とにかく作りましょう。
先行研究を調べて、取捨選択すればいいだけです。
否定文にしない
例えば「この世の中には、幽霊は存在しない」という仮説を立てたとしましょう。
「この世の中には」が仮説の前半で、「幽霊は存在しない」が仮説の後半ですので、ある程度定型文に従った仮説ではありますが、後半が「存在しない」という否定系になっています。
この仮説の最大の問題は、立証できないことです。悪魔の証明とも呼ばれます。
“地球上にツチノコはいる”という命題を証明するためには実際にツチノコを見つければよいのに対し、“地球上にツチノコはいない”という命題を証明することは難しい。
もしこの仮説が「この世の中には、幽霊が存在する」という肯定文であれば、この世の中から1人でもいいので幽霊を探し出せばいいわけです。
一方で、「この世の中には、幽霊は存在しない」という否定文の仮説を立証するのは至難の業。いや不可能です。
全人類60億人を対象に、幽霊であるかないかの調査を実施する必要があります。
もしかしたら、人間のふりをしていない幽霊もいるかもしれません。隠れていて、表に出てこない幽霊もいるかもしれません。
人形やぬいぐるみが幽霊になっている場合もありますので、全世界の人形やぬいぐるみも対象に幽霊チェック調査を実施する必要があります。
木や花が幽霊だったなんてこともあるかもしれませんので、全世界の木や花も確認する必要があります。
そもそも、地球上にいない幽霊もいるかもしれませんので、宇宙にまで調査に行かなければなりません。
否定文の仮説の対象は無限です。その無限を1秒に10億対象調査したとしても、対象は無限にいるので、いつまで経っても仮説は証明できません。
否定文の仮説は、証明することが不可能なのです。
まとめ
仮説を作るにあたっての5つのポイントをお伝えしました。
- 定型文通りにする
- ひらめきを大切にする
- 先行研究をヒントにする
- たくさん仮説を作る
- 否定文にしない
特に重要だと思うのが、2番目に説明した「ひらめきを大切にする」です。
仮説は、研究の根幹です。でも、その割に、あなたが「おもしろい!」と感じた直感や勘が重要な箇所です。
合理的だったり、論理的だったりも必要ですが、やっぱり直感や勘を入れてほしいというのが僕の考えです。
なぜかって、「おもしろい」ことこそ、大学がやるべきことだからです。だからこそ、多くの大学が、あなたのひらめきに期待しています。
僕も、あなたのひらめきをお待ちしています!